「謳う」





君との別れで受けた苦しみを

何百回 何千回と謳ったところで
その思いは尽きないように思えた
どれだけ作品にして残してみても
この心が満たされないこと知っていた


だから 謳うんだろう


こうしてまた一編の形が創造される
これが誰のためになるのか
何のためになるのかは分からない


書かずにはいられないから
ただそれだけのことなんだろう


いくつ形にすれば
この気持ちから抜け出せるのかな
あと何編書けば 傷は癒えるのかな


たとえそれがただの時間稼ぎに過ぎなくても
今の僕にはその時間を稼ぐ事こそが重要で
それ以外に何もない


全てを知って 先回りして
絶望するのなんて簡単
それよりも重要なのは
自分はまだ何も知らないという事を
受け止めること
傲慢から抜け出すこと


明日の事も知らないで絶望するなんて
勘違いもはなはだしいと
自分の心を叱咤(しった)する


どうにかでいい
楽勝じゃなくても
息も絶えだえだとしても
希望にかじりついてたい