「蜃気楼」




蜃気楼の彼方に往ってしまったような

もうぼやけて見えない君の顔



おぼろげな悲しい思いだけが残り

過去には何もない





人生は所詮 

現在の因で未来が創りだされるものなら

最初から何も嘆く必要などなかった





それなのに  僕は





涙をいっそ捨ててしまった方が

どんなに楽だったろう



それをしなかったのはきっと

あなたの言葉がとても力強かったから





あふれる涙を拭こうともせずに僕は

その思いに応えるためだけに生きる

今こうして食べたり飲んだりしている理由は

それ以外に存在しない





あの日 傷だらけだった僕を

救い出してくれた

手を伸ばしてくれた





いっそ殺してくれ、と

懇願することしか知らない僕を助けたあなたを

責めたりした事もある



だけど何も言わずに

黙って見ていてくれました

手を差し出せば

この心 壊れてしまうこと

知り尽くしたかのように



涙ごと捧げて

笑顔を生んでく



太陽と共に起き

月と共に眠りにつく