「猜疑(さいぎ)」





憎しみに心食い破られそうになる度
君の柔らかな微笑みが浮かび
怨念がそのまま悲しみに変わる


その悲しみは目に宿り
世界ごと吸い込んでしまいそうなブラックホール


慟哭も枯れ果てている


声を出す喉さえも失い
手に入れたものといえば
見せかけで偽物の強さ


こんな心のままじゃ
何にも勝てない事は分かっていた


僅かに芽生えた抵抗の力を
人というものに向け
信じるという言葉を猜疑(さいぎ)しながらも
詮索し続けていた


あんな風に何かを心から信じられる者に
心から信じられない者は敵わない


いつまで経っても


どこまで行っても


勝ちたいのなら
人を信じる事に飛び込め


そう心に叫んで
自ら選択した
人を信じるという事を


そして気がつくのはいつも
もっと早く信じればよかったということ