「ぬけがら」




彼が落としたのは

人として生きていた頃のぬけがら



そのぬけがらは しわしわになって

道路の邪魔になるような場所に落っこちている



そのぬけがらは 蹴飛ばされて

からみついて ふみつけられ ふきとばされて



ただのうぬぼれ



うぬぼれよ



中身はどこを歩いているかって?

無論 中身なんて初めからなかったのさ



中身は初めから空気だったのさ



金や羨望や人並みの地位や

人並みのプライドという

もろもろの空気だったのさ



あのぬけがらは



もういない