「not machine」




透明なガラスの壁が迫りくるのなら

たたき壊せばいい

涙が止まらないのなら

太陽の光で乾かしてしまえばいい

その胸が張り裂けそうなら

その思いを込めて叫んでしまえばいい



実に簡単な問題



何かに追われるような恐怖を味わうのなら

いっそ振り向いて抱きとめてしまえばいい

嗚咽をこらえきれそうにないのなら

服の袖を噛んで耐えればいい

空を見るたび

思い出してしまう事があるのなら

思い出さなければいい



こんなにも簡単

簡単な問題なのに

僕は――



それでも僕は僕であり続けるよ

それがどんなに辛い選択であっても

幸福への道だからさ

もし機械なら これらすべての問題を

割り切り 断ち切り

忘れ去る事だってできるだろう



データのバックアップさえなきゃ

記憶を全て吹っ飛ばしてしまう事だって

容易だろう



ところが僕は機械じゃない

人間なんだ



それを面倒だなんて思ったりしないよ

それが人である事の良さだと思うから

人だからこそ苦しみや喜びがあるのだから

確かに全てを捨てたくなることも

あるかもしれない

でもそれをできない事は

必ずしも悪い事じゃない気がするんだ



その痛みが生んだ何かを

幸福の方向へとぶつけていくこと

苦しみを燃やし炎にすれば

自分の心も温かくなる

誰かの心も温める事ができるから