「inversion」



ぼんやりとした頭を
真夜中ひっくり返すようにして言葉並べた


せっかく命を懸(か)けたいと思うものに出会えたのに
それをするなだなんて言うことの方が無茶
そうは思わないかい?


誰だってそういうものを
探し求めているはずなのに
見つけたことがないから
見つけたときにどうするかなんて
考えていないだけだろうけど


自分らしくいられる何かを見つけろと
掛け声だけはいつも一人前
だけどそれを見つけた人を目の前にした途端
それはどうかなと顔をしかめる
それなら一体僕にどうしろっていうの?


他人なんていつもそんなもの
綺麗事ばかり並べることに慣れすぎて
綺麗過ぎるものを見ると怖じけづく


その綺麗過ぎるものとは
守りたいものができたとか
自分らしくいられるとか
これになら命を懸けられるとか
たぶんそんな感じのもの


今までの追い風が
いきなり向かい風になる瞬間は
誰だって驚くもの
でもそのことを
言い訳にはできないんだよ
守りたいものを守れるのは
守りたいものが存在する間だけ
その手をすり抜けてしまったら
二度とは手に入らない
手に入ったとしてもそれは
どんな知者も数えられないほど
気の遠くなるような時間の後


そんな無駄な時間を過ごすくらいなら
この一生の間に掴み
そして離さないでいて