その指が夏の太陽をなぞるとき

その風が僕を苦しめるけど

慣れた頃にはもう

いつも君はいなくなっている



切なさを募らせるだけの

あの暑い夏が

今も僕を苦しめている

記憶というものは

儚くてもいい類のものも

存在することだけ抱きしめて

ぼんやりとする事しか

もう術を知らない



思いだすという事は

まだ懐かしさを感じたいからなのか

それとも無意識なものなのか

未だ分からないままで



その指が夏の太陽をなぞるとき

その風が僕を苦しめるけど

焼きついた景色は

いつもモノクロの美しささ



手の届かないものが

ほとんどの今でさえ

昔よりは何かを手に入れている

気づかないばかりの僕は

苦しんでばかりを抜け出して

木漏れ日の中を走り抜けていた



擦りむく膝も

どこか懐かしくて

何かに追われる事も

楽しかった事もあった

そんなことを思い出した痛み



その指が夏の太陽をなぞるとき

その風が僕を苦しめるけど

慣れた頃にはもう

いつも君はいなくなっている